試験やテストで良い結果を残すためには“暗記”は欠かすことはできません。しかし人によってこの暗記が苦手で、どれだけ時間をかけても全く覚えられずに苦戦する人もいるでしょう。
暗記とは、脳に情報をインプットさせる作業のことを言います。そのため、脳の仕組みを理解し、インプットした情報を覚えやすいやり方で暗記することによって、より簡単に、なおかつ効率よく覚えることができます。
暗記が苦手な人というのは、学力が低いわけでも才能がないわけでもありません。ただ実践している暗記の仕方が脳の特性に合っていないだけなのです。
そこでここでは、脳の特性を上手に活用した4つの暗記術を紹介します。もし今まで暗記に苦労されているのであれば、これからお話しする方法を実践してみてはいかがでしょう。
1.暗記は小刻みに行う
「暗記術を活用して試験をラクショーで乗り切るためのコツ」でも紹介しているように、暗記の基本は暗記する“回数”を増やすことにあります。特に初めてインプットする情報はすぐに忘れやすいため、何度も何度も暗記して脳に定着させる必要があります。
その時のポイントとしては、暗記にかける時間はなるべく短くすること。同じ量を暗記する時も1時間かけるよりも30分しかかけない方が覚えやすいと言われています。
その理由は心理学の「親近効果」と「初頭効果」の2つが関係しています。
親近効果とは、物事の最後に起こったことが記憶に残りやすい現象で、終末効果とも呼ばれています。「終わりよければ全てよし」と言われますが、これはそれまで嫌なことがあっても、最後に良いことが遭ったらその記憶が強烈に残っているため、それまでも嫌なことのインパクトが弱くなってしまうからです。
また初頭効果とは、親近効果の反対で最初に入ってきた記憶が残りやすいとい現象です。初対面の人5人にあいさつされた場合、最初にあいさつされた人の顔と名前しか憶えていない・・・なんてことも、この初頭効果によるものです。
つまり、暗記している時間の中でも頭の中に入りやすいタイミングと入りにくいタイミングがあるということ。最初と最後に覚えたものは記憶に残りやすく、中間で覚えたことは記憶に残りやすいのです。
1回の暗記回数をなるべく短時間に区切って最初と最後の回数を多くすると覚えやすいのはこの親近効果と初頭効果の回数が増えるからです。
暗記に費やす時間を1時間の場合、親近効果と初頭効果によって覚える機会は1回しかありません。しかし暗記を10分×6回にした場合、親近効果と初頭回数が起こる回数は6回になり、1時間で覚えられる量は自然と増えます。
ですので、暗記をする時はなるべく短時間で区切り、暗記する回数を増やして何度も繰り返し取り組んだ方が効果的。長時間やっても暗記自体シンプルな作業のため、集中力が続かないのでなるべく短時間のスパンで回数をこなすやり方で暗記していったほうが脳に負担はかかりません。
2.関連付けできるものから暗記する
人の名前や顔を覚える時、全く初対面の人はしばらく時間が経つと忘れてしまうことがあります。しかし
「名前が友達と同じ」
「顔が昔好きだった人と似ている」
「実は友達の親せきだった」
という人は、たとえ初対面でも忘れずにしっかり覚えていませんか?実はすでに持っている自分の記憶や知識に関連しているものというのは、比較的記憶に残りやすい特徴があるのです。
この特徴を利用することで、今まで覚えられなかったことでも一度暗記しただけで記憶に残りやすくなります。ですので、暗記をする時には、いくつか関連したグループを作り、そのグループごとに覚えていくと無理なく記憶することができます。
例えば英語のsea(海)を覚える時も単語1つを見ただけではなかなか記憶に残らないかもしれません。しかし「八景島シーパラダイス」の“シー=sea”だとすれば、そこから海を連想しやすく、seaが海だということを暗記しやすくなるのです。
また歴史などでは
織田信長が亡くなったのは本能寺の変
↓
本能寺の変で信長を討ったのは明智光秀
↓
光秀を討ったのは豊臣秀吉
というように、人の名前や出来事を1つずつ覚えるよりも時系列に沿って覚えることで、人の名前が自然に関連づけられるため、記憶に残りやすくなります。
この時、自分にとってもっとも強烈に残っている記憶から徐々に関連付けていくとすんなり覚えることができます。
例えば先ほど歴史の話でも「明智光秀」が最も印象に残っているのであれば、まずは「明智光秀」を中心に情報を広げていきます。そうすることによって、もし忘れてしまった時も「明智光秀」から追いかけることで簡単に思い出すことができます。
単語ごとで覚えようとすると無理やり情報を詰める形になるため、脳に大きなストレスがかかってしまいます。こうしたストレスを回避するためにも、暗記する時は、なるべくいくつの単語(情報)を紐づけ、それを丸ごと覚える方法を実践しましょう。
3.暗記したいものの印象を強くする
教科書や参考書を開くと、太線で書かれていたり、赤い文字で書かれているワードがあります。これらはとても重要なワードで、是非とも覚えてもらいたいワードなため、あえて他の文字と比べて目立つようになっています。
人が記憶する時、よりインパクトが強いものが残るようになっています。例えば
・持ったら熱かったやかん
・食べたら辛かったカレー
・電車の中で遭遇した香水がきついおばちゃん
・自分が好きなアーティストの曲
などなど、感覚や感情がより震えるようなものの方が脳に強烈な印象を与え、忘れることができなくなります。そのため、暗記する時も暗記したいものをわざと印象を強くさせるのがポイント。
暗記用のノートを作る時も、大事なワードだけは色を変えて目立たせたりすることで、周りのワードと差別化することができます。そのため、ノートを開いても重要ワードだけがすぐに目に飛び込んでくるようになるため、記憶に残りやすくなるのです。
ただこの方法は、暗記したい内容を正確に捉える必要があります。
大切なワードの区別がつかないと、あらゆるものに色をつけることになり、結果的に何が本当に重要なのか分からなくなってしまいます。「勉強できない人がやりがちな間違ったノートの取り方8選」でも取り上げていますが、色が多彩だと逆に見にくくなってしまうので、本当に覚えないといけないものだけ印象を強くしましょう。
覚えたいワードについては、基本的に教科書に準じて選定すると失敗することはありません。また一度暗記したけど時間を空けたら忘れてしまったものなど、記憶に残らないものに絞って実践すると効率よく覚えることができます。
また、自分が暗記したものによって印象を強くするものを変えるのもアリです。そうすることによって、まだ覚えていない部分だけ覚えやすくでき、まんべんなく暗記することができます。
4.日によって暗記の方法を変える
新しい情報を取り込もうとする時、脳に刺激を与えることで記憶に留めやすくなります。逆に言えば脳に刺激を与えない覚え方をすると、どれだけ頑張っても成果は表れません。
「努力ゼロでも忘れることなく記憶できる究極の暗記方法」でもお話ししているように、最も効果的に暗記するには感覚や感情をフルに活用することです。そうすることで、脳に刺激を与えることができ、覚えやすく忘れにくい情報をインプットすることができます。
ただし、いつまでも同じ方法で暗記していると、脳がその刺激に慣れてしまい学習効果が低下してしまいます。今までは50語覚えられた方法でも、ずっと同じ方法でやっていたら40語しか覚えられなかった・・・なんてことも珍しくありません。
そのため、暗記の仕方についてはある程度レパートリーを持っておき、定期的に変えながら覚えるのがベスト。そうすることで脳のマンネリ化を防ぎ、常に刺激を与えることができるのです。
例えば、普段は自宅の机で暗記していたのを、学校に残って覚えたり、図書館など自宅の外でやってみるだけでも効果はあります。暗記する時の環境を変えることによって、同じ暗記でも全く違う刺激を脳に与えることができます。
また、普段は書いて覚えていたのを、耳で聞いて覚えたりひたすら読んで覚えたりなど、暗記の時に使う五感を変えるのもいいでしょう。それ以外にも暗記をする時にアロマなどを炊いてみるのもアリです。
脳というのは、常に新しいこと、新しい刺激を求めています。言い換えれば、刺激が一定になると徐々にマンネリ化していき、学習効果を落ちてしまいます。
それを防ぐために、暗記の仕方のレパートリーをいくつか持っておかなければいけません。「暗記が苦手な人でもどんどん記憶できてしまう8つの暗記法」でいろいろな暗記法を紹介しているので、この中からいくつか実践してみてください。
まとめ
ここで紹介した4つの暗記法
1.暗記は小刻みに行う
2.関連付けできるようなものから暗記する
3.暗記したいものの印象を強くする
4.日によって暗記の方法を変える
というのは、どれも特別な方法でも簡単に暗記できる裏ワザでもありません。脳の仕組みを理解し、より効率よく暗記するためのいわば基本的なやり方と言っていいでしょう。
試験やテストなどで良い点を取っている人というのは、こうした特性を普段の勉強に取り入れています。だから時間をかけることなく効率的に覚えることができるのです。
基本的に頭が良い人と悪い人の違いというのは紙一重にすぎません。言い換えれば、勉強の仕方や暗記の仕方を少し変えるだけで劇的に学力を上げることができます。
もし「なんで自分はこんなにも頭が悪いんだろう・・・」と悩んでいるのなら、それはもしかすると勉強の仕方が間違っているかもしれません。まずは自分の勉強の仕方を見直し、より効果的なやり方を学んでから勉強に打ち込んでみてください。