「一瞬で記憶するような術を使う能力者をテレビ(ユーチューブ)で見たけど彼らって何をやってるのか?」
と世の中には素晴らしい才能や驚異的な能力を持った人達がたくさんいます。
その中に電話帳を見ただけで記憶できてしまうような人もいます。
そういう人達は何か特別なことをしているのではないか?と疑問に思いますよね。
実はこうした能力を“瞬間記憶能力”といいます。
見たものを一瞬で覚えられるわけですから記憶や暗記が苦手な人には「うらやましい」と思えることでしょう。
こうした能力は先天的に身についているケースがほとんどのため、どれだけ練習しても瞬間記憶能力者になることはできません。しかし、ポイントさえ押さえておけば、彼らほどではないにしろ見た瞬間に記憶できる力を上げることはできます。
そのためには、瞬間記憶能力がどういったもので、脳をどのようになっているのかを知ることが大切。そこから脳の使い方や記憶の仕方を学び、自分なりにアレンジすることで、短期間で見たものを記憶させることができるのです。
そこでここでは、瞬間記憶能力の詳細と、その能力者達から学ぶトレーニング法を紹介していきます。ここで紹介する内容を参考に少しでも記憶力が上がるための訓練を積んでもらえればと思います。
瞬間記憶能力とは
瞬間記憶能力とは、別名『アイカメラ』とも言われており、見たものを一瞬で脳に記憶することができる能力のこと。自分の目がカメラのレンズのようになっており、シャッターを切るのと同じくらいの速さで、見たものを“画像”として脳にやきつけることができるのです。
目に見たものであれば基本的にどんなものでも記憶することができます。風景や人物の顔などはもちろん、教科書や本のページでも、全て画像として記憶します。
そのため、普通の人はできない“教科書丸暗記”なんてことも瞬間記憶能力者はいとも簡単にやってのけてしまうのです。
この瞬間記憶能力は先天性のもので、訓練やトレーニングをしたからといってこの能力が身につくことはありません。そもそも人の脳は、全機能の半分以上が2歳までに完成され、あとの半分は11歳までにできあがります。
従って成人になってから新しい能力を身につけるのは極めて難しく、今まで成人になってから瞬間記憶能力が身についた事例は報告されていません。つまり、今から瞬間記憶能力を身につけようと思っても無理だということです。
ただし、この能力にはデメリットもあります。
瞬間記憶能力は見たものをすぐに記憶してしまいます。しかしこれは自分の意思には関係なく記憶してしまうため、見たくないものまで記憶してしまうのです。
人はいい思い出や経験を残し、悪い記憶や嫌な思い出は忘れることができます。しかし記憶力が良すぎると“忘れる”ということが難しくなるため、嫌な思い出や悪い記憶もずっと鮮明に覚えていなければいけないのです。
また記憶力の良さから、一度間違ったことを覚えてしまうとそこから修正を書けることが難しいのもデメリットと言えます。つまり、記憶の取捨選択や修正が思うようにできないことも瞬間記憶能力の特徴と言えるでしょう。
瞬間記憶能力者の傾向
瞬間記憶能力を持っている人というのは、ご想像通り驚異的な記憶力を持っています。しかし、こうした能力の偏りというのは、別の能力が劣っているから手にできるものです。
つまり、瞬間記憶能力者の多くは記憶力以外の能力が一般の人より劣っていたりします。
例えば先ほどの話でも、記憶力が良すぎるために忘れることができないのも“忘れる力”が一般の人より劣っていることを意味します。勉強などにおいて忘れることは起こってほしくない現象かもしれませんが、忘れることができるからこそ、今を明るく生きることができるのです。
また忘れる力が劣っている以外にも瞬間記憶能力者の傾向というのはいくつかあります。
もちろん普通の健常者でこの能力を持っている人もいなくはないのですが、割合的に何からの能力が劣っている人が多いようです。
その中でも特に多いのが「サヴァン症候群」です。
サヴァン症候群とは
サヴァン症候群とは、知的障害や発達障害などのある人達の中でも、一部の特定の分野に限って優れた能力を発揮する人達のことを指します。そのため、サヴァン症候群の人達の多くは自閉症の障害を持っている傾向があります。
「実は病気じゃない?自閉症の人が持っている隠れた才能」でも紹介している通り、自閉症の人達は
・対人交渉の質的な問題
・コミュニケーションの質的問題
・イマジネーション障害
などといった障害を抱えているケースがほとんどです。瞬間記憶能力者の中にもコミュニケーション能力が劣っている人がいることから、自閉症による脳の障害から開花した能力とも考えられます。
ただし、サヴァン症候群になる原因については現在のところこれといった明確な答えはまだ見つかっていません。おそらく脳に原因があるのでは・・・という説が有力ではありますが、コミュニケーション能力が劣っていても別の能力が開花していない人もいることから、何とも言えないのが現状です。
瞬間記憶能力が開化したきっかけ
そもそもなぜ普通の人には開花せず、自閉症の人のように脳の発達などに障害がある人に瞬間記憶能力が開花するのか・・・その原因は右脳が極端に発達したからだと考えています。
脳には左脳と右脳があり、左脳は論理などの人間的な考えを処理する時に使われ、右脳は知覚などの動物的な考えを処理する時に使われます。また右脳で記憶した情報を処理し、それをより分かりやすく整頓するのが左脳の役割です。
しかし左脳に障害があると“情報を分かりやすく整頓する”という能力が劣ってしまいます。そのため、左脳のフィルターを通すことなく右脳で記憶した情報を全て出すことができるため、記憶したことをそのまま表に出すことができるのです。
人の脳は物事を理屈でいろいろ考えようとします。するとそれだけ記憶力が低下します。(正確には記憶したものを上手にアウトプットすることができない)
この物事を理屈で考えるのを左脳で行っているのですが、左脳が障害によってうまく機能しないと理屈で考えることなく表現することができます。そのため、見たものを左脳を通さず右脳に記憶し、表現する時も左脳を経由せずに表現できるため、見たものを一瞬で記憶することができてしまうのです。
瞬間記憶をマスターする3つのトレーニング
これまでお話ししたように、瞬間記憶能力を身につけるのは不可能に近いです。できたとしても一時的な短期記憶として留まるため、時間が来れば忘れてしまうことでしょう。
とはいえ、彼らの能力を身につけようと練習することは悪いことではありません。記憶として長く脳に定着させるためには右脳を働かせることが必須であり、瞬間記憶能力を身につける練習はそれにもってこいだからです。
とはいえ、ただ見たものを瞬間的に記憶しようとしても、左脳が働くためなかなか脳に定着しません。そこで次の3つのトレーニングをすることをおすすめします。
1)映像として記憶する
先ほども言いましたが、瞬間記憶能力者達は、見たものを“画像”として記憶しています。その画像を頭に思い出して書いたり話したりしているため、寸分の狂いもなく表現することができるのです。
つまり、文章だろうとなんだろうとみたもの全てを“画像”として右脳に記憶すれば、それを思い出すことで簡単に記憶を引き出すことができます。このような映像記憶をするトレーニングをすることが記憶力アップにつながるのです。
そのための具体的なトレーニング法として有名なのが『オレンジカードトレーニング』です。
オレンジカードトレーニングとは
オレンジカードトレーニングとは、特殊なカードを使って見たものを映像として記憶する訓練のことをいいます。やり方としては20~30秒ほどカードを見つめ、目を閉じた時にその残像が見えるようにすること。
これを繰り返しトレーニングすることで、徐々に残像の見え方が変わってきます。その見え方は大きく分けて四段階に分かれています。
- 第一段階 : 目を閉じた時、画面の補色が見えます。 オレンジ地に青の円がある画面⇒青・藍地にオレンジ色の円が見えます。
- 第二段階 : 目を閉じた時、残像が正しい色で見えます。右脳のイメージ力を描く力が活性化され、オレンジ地に青の円が見えます。 また、残像が残る時間も長くなります。
- 第三段階 : 自分の好きなように残像の色、形を自由に変えることができます。
- 第四段階 : 自発的に様々なイメージを見ることができるようになります。
2)寝る前に1日の出来事をイメージする
記憶力を高めるには「記憶するためには欠かせない質の高い“アウトプット”の仕方」でお話ししているように、インプットとアウトプットが必要になってきます。これは映像を記憶する際も同じで、インプットした映像をアウトプットすることで、より映像を記憶する力を鍛えることになるのです。
しかし、映像記憶をアウトプットするには、左脳の機能を停止させないといけません。自閉症の人のように幼少の頃から障害があるのならともかく、そうでない人が左脳の機能を意識に止めることはできません。
そこでおすすめなのが頭の中で今日起こったことをイメージすること。できればなるべくその時の情景も細かく思い出すようにすれば、映像を頭の中でアウトプットしたことになります。
3)記憶するものを別のものに置換する
瞬間記憶能力といっても具体的には様々な記憶の仕方があります。その1つが「古代から活用されている歴史ある4つの記憶術」の中でも紹介されている数字や文字に置換して記憶する方法です。
自分の中で数字や文字の置換のルールを設定し、それに従って変換して覚えることで、記憶しやすいものにしてから頭の中に詰め込みます。そうすることで、覚えやすく忘れにくい記憶として頭に定着するのです。
この時の置換のルールは自分が納得できるものであれば、たとえ周りから共感を得たものでなくてもかまいません。大事なのは自分がより覚えやすいものに変換できるかであり、自分以外の人の記憶力にまで気を配る必要はありません。
まとめ
瞬間記憶能力は、脳に障害を抱えているサヴァン症候群や自閉症の人達が開花した能力であり、技術や要領で身につけられるものではありません。しかし、こうした記憶の仕方を参考に、自分なりの記憶術を手に入れることはできます。
脳の働きは人によってそれぞれ異なります。自分の脳の特徴を理解し、それにあったやり方で勉強や暗記をしていくことが最も大事だということを知っていもらえればと思います。