1つでも多くの情報を記憶する、1語でも多くの単語を暗記する・・・こうした記憶や暗記は勉強する上でもっとも重要なスキルの1つです。
この記憶している情報量が多ければ、それだけ試験やテストなどですらすら解答することができますし、逆に少なければあれこれ悩んだりサッパリ答えられません。
そのため、より効率よく暗記する方法やたくさんの情報を頭の中に詰め込む記憶術というのは昔からいろいろ存在します。様々な記憶術を駆使し、試験を通過することで、自分が理想としていた人生に進むことができるのです。
しかし記憶術というのは、ただ簡単に記憶できるテクニックではありません。記憶術をマスターすることにより、単に頭の中に詰め込める情報量が増えるだけでなく、さまざまな変化を実感することができるのです。
そこでここでは、多くの人が知らない記憶術の本当の特徴についてお話していきます。また記憶術のメリットやデメリット、さらには具体的な実践方法まで紹介していきますので、なかなか勉強内容が頭に入らない人は、ぜひ参考にしてもらえばと思います。
記憶術とは
記憶術とは、大量の情報を急速になおかつ長期にわたって記憶するための技術のことを言います。細かい覚え方については違いはあるものの、大きく分けると2つのやり方があります。
1つは記憶のコツようなものによって効率よく記憶するもの。
「古代から活用されている歴史ある4つの記憶術」で紹介しているような昔からあるものだったり、「暗記が苦手な人でもどんどん記憶できてしまう8つの暗記法」で紹介しているような暗記法のように、記憶の仕方を工夫することで効率よく覚える方法を指します。どちらかというとテクニックタイプの記憶術がこちらに該当します。
そしてもう1つは“記憶力”という人間の能力を向上させるもの。
人間の脳には物事を記憶する力があり、その力を上げることを目的とした記憶術です。「記憶力アップに欠かせない“海馬”を鍛えて活性化する方法」でお話しているような、実践することによって脳が活性化させ、それによって記憶できる量を増やす方法がこちらに該当します。
どちらがおすすめなのか・・・というのについては人によって個人差があります。正確や考え方などによって前者の記憶術のほうが覚えやすいという人もいますし、後者の記憶術のほうがしっくり来るという人もいます。
ですので、様々な記憶術を試してみて、一番頭に残っている方法を極めていくのがいいでしょう。
暗記法と記憶術との違い
記憶術とよく似た言葉で「暗記法」というものがあります。こちらは暗記するためのテクニックの事を指し、ニュアンスとしても記憶術と非常によく似ています。
しかし、暗記法と記憶術には大きな違いがいくつかあります。例えば暗記法というのは覚えるために書いたり声に出したりといった何らかの行動が必要になります。
例えば「脳の特性を上手に活用した4つのお手軽暗記術」で紹介しているようなものは暗記法の部類に入ります。あくまでも勉強法の一環となるものは暗記法と呼ばれるものです。
それに対して記憶術は、脳を働かせることに重きを置いた覚え方のことを言います。もともと記憶術は“右脳型”の勉強法で、実践することによって右脳の働きが活発になるといわれています。
そのため、主に左脳を働かせて覚える暗記法とは根本的に使っている脳が違うのです。思考や倫理をつかさどっている左脳よりも知覚や感性をつかさどっている右脳を使って覚えたほうが忘れにくいため、記憶術によって覚えたほうが忘れにくいのです。
ただし、だからといって暗記法がダメというわけではありません。
記憶術は普段勉強であまり使わない右脳を使うため、慣れるまでに時間がかかってしまいます。そのため、一夜漬けなどの時間がない時は暗記法を実践したほうが試験を乗り切れる可能性が高いのです。
大事なのは記憶術と暗記法の違いを理解し、その時によって覚え方を使い分けること。そうすれば、試験に必要な情報を短期間で効率よく覚えることができます。
記憶術のメリット・デメリット
先ほども言いましたように、記憶術は主に右脳を使って覚えるテクニックです。人は勉強をする時、ほとんど左脳ばかりが働いており、右脳は10%ほどしか動いていないという研究結果が出ています。
そんな右脳を意識的に動かして覚える方法が記憶術です。左脳ではなく右脳を使って記憶することで、忘れにくく思い出しやすい記憶として頭にストックすることができるのです。
そんな記憶術にもメリット・デメリットそれぞれ存在します。この両方を理解し、正しく実践することで、記憶術の効果をより大きく実感することができます。
記憶術のメリット
記憶術の最大のメリットは、なんといっても“即効性”です。記憶術を使えば短時間で必要な情報を全て覚えきることができます。
もちろん覚える量によって記憶しきれる時間はかかりますが、それでも普通に暗記するよりははるかに短い時間で覚えることが可能です。さらに、右脳を使って記憶しているため、忘れにくく、ちょっとしたきっかけですぐに思い出せる情報として常に頭の中に留めておくことができます。
「効率よく勉強するために知っておくべき記憶のメカニズム」でもお話しているように、記憶には短期記憶と長期記憶という記憶の二重貯蔵モデルという概念があります。そして忘れにくい記憶とするためには長期記憶として覚えていく必要があるのです。
本来であれば、短期記憶の時に暗記→忘却を繰り返巣必要がありますが、記憶術で覚えることで、こうした工程を全て飛ばして一気に長期記憶としてインプットすることができます。そのため、覚えるのに時間がかからず、なおかつ忘れにくい記憶として覚えることができるのです。
記憶術のデメリット
様々なメリットがある記憶術ですが、実は意外(?)にもデメリットがあります。まず最も大きなデメリットが普段と違う脳を使うため、記憶術をマスターするのに時間がかかるということ。
先ほども言いましたが、普段の生活では人は主に左脳を使います。しかし記憶術では右脳を主に使うため、この右脳を働かせることに慣れないとなかなか覚えられません。
さらに、普段の生活では使わない右脳を使って記憶するため、精神的な不安を感じるケースもあります。記憶術を使って覚えると書いたり読んだり・・・といった暗記する作業が一切必要なくなります。
そのため「本当にこれで大丈夫だろうか?」といった不安に襲われることも珍しくありません。また、簡単に記憶できてしまうため、理解力や読解力が必要な部分まで全て暗記してしまったりと、暗記の使いどころも間違えてしまう可能性があるため、今まで以上にしっかり学習計画を立てて勉強を進めていく必要があります。
記憶術の基本的な実践方法
これまで、記憶術の特徴やメリット・デメリットについてお話してきました。これらを読んで記憶術がどういったものか理解していただいたと思います。
では記憶術を使って覚えるにはどういったことをすればいいのか?まず前提としてあるのは、記憶術は“既知”と“未知”を組み合わせることが重要だということです。
既知とはすでに知っている知識や経験のことで、すでに自分がもっている長期記憶のことを指します。その既知と新しくインプットした未知(新しく学ぶ知識)を組み合わせることで、より簡単に記憶することができるのです。
「努力ゼロでも忘れることなく記憶できる究極の暗記方法」で紹介した方法も既知と未知を組み合わせる方法を用いたものです。では具体的にどのようにすればいいのか?
基本的には次の3つの練習をすることで記憶術をマスターすることができます。
1)イメージで記憶する
記憶術はテキストなどの文章を覚えるのではありません。文章や言葉をイメージすることによって、頭により刻み込みやすくすることが重要なのです。
例えば「りんご」を覚える時も、果物の一種だとかこんな成分が含まれている・・・みたないことよりも
・赤い食べ物
・丸い食べ物
・食べたらシャリシャリという音がする
といったことの方がピンとくるはず。このように、言葉にするよりも五感をフルに使って記憶したほうがより簡単に覚えられるのです。
さらに、五感(イメージ)に説明(文章)を加えることによってより覚えやすく、万が一忘れた時、ちょっとしたきっかけですぐに思い出すことができます。覚える時は自分なりのイメージでもいいのであらゆるアプローチから記憶するようにしましょう。
2)既知と未知をつなげる
記憶術を実践する上で最も基本的なことですが、慣れるまで大変なのがこの既知と未知をつなげることです。言葉にすれば言っていることは理解できるのですが、実際にどうやるかがコツをつかまないとできない人が多いと思います。
例えば先ほどの例で「りんご」を覚える時、りんごを写真や絵で見たことがある人は
“赤い果物(既知)=りんご(未知)”
となります。また、木になっている姿は見たことはないけど、食べたことがある人は
“甘くてシャキシャキした食べ物(既知)=りんご(未知)”
と頭の中でつなげることによって「りんごってこういうものなんだ」という新しい情報をインプットすることができます。そして、既知によってつながれた新しい情報は既知につながれているため、忘れにくいのです。
そのためには、既知がしっかりと頭の中で整頓され、なおかつ積極的に未知とつなぐ意識が必要です。多少無理やりでもいいので既知とつなげていくことで覚えてすぐ忘れた・・・といったことがなくなります。
3)記憶の宮殿をつくる
記憶の宮殿とは、これまで覚えた情報が詰まっている頭の中にある“家”のことで、各部屋にそれぞれ長期記憶して覚えている情報が置いてあります。そして思い出したい情報を引っ張り出す時は、この宮殿の中からその情報がある部屋に行き、取りに行けばいいのです。
人は全ての記憶に対してなにかしらのラベリングをしています。例えば『小学校の時』や『新卒1年目の時』のような時系列的なものだったり、『家族で旅行に行った時』というような誰かと共有している記憶だったり。
このように記憶を1つずつラベリングをしておくことで、欲しい時に欲しい情報をすぐに思い出すことができます。こうした記憶の宮殿は、記憶術を正しく活用していれば自然とできてくるものなので、特に意識をする必要はありません。
まとめ
これまでお話したように、記憶術とは物事を自分なりに変換して覚えやすくしてインプットする技術のことです。これによって、今まで自分が勝手に限界だと思い込んでいた記憶力を底上げすることができ、より多くの知識を頭に詰め込むことができます。
ただし、どんな記憶術も一朝一夕でマスターできるわけではありませんし、実践したからといってすぐに覚えられるわけでもありません。記憶術は普段あまり使わない右脳を使うため、ある程度練習が必要になってきます。
ですので、日頃から記憶術の練習をしておくのがおすすめ。そうすることで、いざ試験前にドタバタすることなく、必要な知識をもれなくインプットして挑むことができます。
これまで暗記が苦手だったり記憶力に自信がないのでれば、この機会に記憶術を身につけてみてはどうでしょう。