速読は、本や文章を読むスピードを速くするための技術です。その方法はいくつもあり、人によってさまざまな速読術がインターネットや雑誌などで紹介されています。
どんな速読術を用いるかは人によって異なります。性格、才能、持っている知識などがそれぞれ異なるため、「この速読術は誰でも効果がある!」という万能なものはないと思っていいでしょう。
ただし、どんな速読術も基本的な部分に大した違いはありません。どんな速読術でも、この基本的な部分がしっかり押さえられているかどうかによってその効果は大きく変わってきます。
「早く読めるだけじゃない?速読で得られる5つのメリット」でも紹介しているように、速読をマスターすることによってさまざまなメリットがあります。こうした速読によって得られる効果を最大化させるためには、次の5つのコツをしっかり押さえておくことが重要です。
その5つとは
1.速読をする“目的”を明確にする
2.点と線を意識して読書する
3.部分的にフォーカスしながら本を読む
4.記憶のトリガーを作る
5.文字を追いかけないように読む
のこと。そこでここでは、速読術の効果を最大化させるうえで大切な上の5つのコツについて1つずつ解説していきます。これから速読に取り組もうとしている、もしくはつい最近速読を始められたのであれば、ぜひこの5つを心掛けて取り組んでみてください。
1.速読をする“目的”を明確にする
速読術をマスターする前に、そもそもなぜ速読を身につけようとしているのか・・・この“目的”が明確になっていることがまず大切です。この目的の大切さは「読書効果を3倍にするための本の読み方4ステップ」でもお話ししていますが、基本的には同じような理由です。
さらに速読に限って言えば、こうした目的を明確にすることで、本に対する苦手意識などをある程度和らげる効果もあります。
速読をしてもしなくても『本を読む』ということには違いありません。そのため、本に対する苦手意識があるかないかによって、速読術がマスターできる期間も変わってきてしまうのです。
速読の練習で本を読むことは避けては通れません。その時「なんか苦手だな」「どうにもつまらないな」という気持ちでやっていれば、それだけ速読に対するモチベーションも低くなり、最終的には速読術を身につけることを諦めてしまいます。
そうならないように
・なぜ速読術を身につけようと思ったのか
・速読術を身につけてどうなりたいのか
といった目的を掲げておくことが大事。これを掲げるだけでも本に対する苦手意識をモチベーションや勢いで相殺してくれるため、より早く速読術をマスターすることができます。
こうした本に対する苦手意識は、速読を練習していけば自然となくなり、最終的には完全に自分の中で消し去ることができます。つまり、速読を始める最初だけ乗り切ればいいだけであり、その最初を乗り切るためにもきちんと速読に取り組む目的をハッキリさせましょう。
2.点と線を意識して読書する
速読をすることで、本や文章を読むスピードが今までより3~5倍上げるようになります。さらにそこから練習を重ねれば20倍近くまで上げることができます。
そこまで読むスピードがあがる速読術ですが、実は基本となる方法というのはほとんど一緒です。それは“点と点をつないで線として読む”というもの。
実は速読の技術というのは、一字一句読んでいるわけではなく、部分ごとに情報を頭に入れ、そのうえでどんなことが書かれているかを理解するものです。例えば下の図を見てどんな文字が入るかわかりますか?
速読はこれと同じ要領で読んでいるだけです。だから全文を完璧に読まなくてもその文章から伝えたい内容を理解することができるのです。
飛ばし読みをしても内容が理解できる人というのは、部分的に視覚に入れ、そこから内容を把握し、理解する力を用いているため、全文を読む必要がない・・・つまり、それだけ時間が短縮できているのです。
これを意識して読書をするだけでも、要領が良い人は簡単に今までより倍以上のスピードで読破できてしまいます。もちろん最初はついつい文字を追いかけてしまうので練習が必要ですが、できるようになれば非常に簡単に速読ができるようになります。
あとはこの基本をさらにアレンジを加えることによってより速く読めるようになります。どんな速読術でもまずは文章の中にある“点”だけをつないで、頭の中で線にする読み方を試みてください。
3.部分的にフォーカスしながら本を読む
世に出ている話題や主張というのは、賛同できる部分もあればそうでない部分も必ずあります。例えばスポーツなどで応援しているチームが負けた時も「あの時致命的なミスをしていなかったら・・・」と敗因が自チームにあると考える人もいれば「相手チームのあの選手が良かったから」と考える人だっています。
このように『応援しているチームが負けた』という事実が変わらなくても、フォーカスする部分が異なるとその事実の印象は大きく変わってきます。
こうした様々なフォーカスから考えることは速読や勉強には非常に大切なことです。本を読むのが苦手で仕方がない人も
「なぜ本が苦手になったのか?」
「どうして本を読むがこんなに億劫なんだろう?」
と、少し視点をずらして考えることにより、違った答えが見えてきます。それによって、今まで見えてこなかったり、見ようとしなかったことが見えてきて、読書や速読に対する意欲がわいてくるのです。
また実際に速読している時も、読んだ内容をさまざまな点からフォーカスすることによって、もっと知りたい!もっと読みたい!という意欲がわいてきます。このように、1つの事実や内容を1つの視点から見るのではなく、様々な角度から見ることによって、読書や速読に対するモチベーションが高くなります。
勉強も速読も“楽しんでやる”からこそその効果を最大化することができます。せっかく時間をかけて取り組んでいることなので楽しく取り組める工夫を自分なりに考えて実践していきましょう。
4.記憶のトリガーを作る
人の脳は、ただ知識や情報をストックしておくだけでなく、それらの情報を検索する仕組みも備わっています。この検索の仕組みを使って情報を引き出すためには、それを引っ張り出すための『トリガー』が必要です。
例えばインターネットなどで検索する時も必ず“検索ワード”を用いて検索を始めます。例えば「簡単にできるダイエット」の情報が欲しい場合は
“簡単 ダイエット”
といった言葉で検索をして、その情報が掲載されているホームページを探しますよね?人の脳もこれと同じような機能があり、それによって脳に蓄積されている情報を引き出しているのです。
つまり、速読をして情報を詰め込む際にも、こうした記憶を引っ張り出すトリガーを作っておくことによって自由にその記憶を活用することができるのです。
「取り組む前に知っておくべき速読によって得られる本当の効果」でもお話ししているように、速読に取り組むことによって右脳の働きが活発になり、記憶力がアップします。それは速読によってこれまで覚えたことやこれから記憶することに対して各々トリガーを設置できるようになるから。
こうした記憶のトリガーは意識して作るものではなく、速読を練習することによって脳が自然とつけられるようになっていきますので、特に意識する必要はありません。こうした記憶力向上の面でも速読は非常に効果的なので、それだけでも取り組む価値があることを理解しておきましょう。
5.文字を追いかけないように読む
速読をすると右脳の働きが活発になると言います。その理由は、速読によって『文字を追いかける読み方』から『全体を把握してイメージする読み方』に変わっていくからです。
五感の中でも特に視覚の情報は非常に発達しており、記憶と密接に関係しています。そしてこの視覚情報には“右脳領域”と“左脳領域”という2つの領域が存在します。
右脳領域とは、背景や場面を記憶するところで、全体的な視野は広くなっています。そのため、記憶には残りにくい(正確には記憶しているけどその感覚がない)ものの一度覚えたら忘れにくい性質を持っています。
それに対して左脳領域とは、ある特定部分に対して意識的に焦点を当てて記憶するところで、より細かい部分まで記憶することができます。そのため、記憶はしやすいのですが、忘れやすい特徴があります。
速読はこの2つの視覚領域を上手に使い分けることによって理解力を落とすことなくより速く読めるようになる技術のこと。特に右脳領域で記憶する力を強化するため、なるべく文字は読まないようにするのが練習するうえでのポイントです。
文字を追いかけてしまうというのは、その文字にフォーカスしているため、左脳領域を使って記憶していることになります。確かにそちらの方が覚えている実感はありますが、すぐに忘れてしまいますし、読むスピードの限界にすぐにぶち当たってしまいます。
しかし右脳で記憶する場合、全体を“背景”として記憶するため、読み進めるといったことをしなくても読むことができます。そのため、左脳を使って読むよりもはるかに速いのです。
また、右脳を使って読むことで読んだ内容がより忘れにくくなります。とはいえ、速読の練習でもしない限り、右脳を使って読んでいる人は少ないので『文字を追いかけない』読み方を心掛けて訓練してください。
まとめ
速読術とは、ただ文章を追いかけるスピードを上げるものではありません。脳の特性を理解し、より効率よく読むだけでなく、読んだ情報をしっかりインプットするための技術なのです。
現在小さいお子さんに速読を推奨している学習塾などもありますが、速読をすることによって脳が活性化され、勉強面で大きなアドバンテージを得ることができるから。もっと言えば速読をすることによって記憶力と理解力が向上するのです。
速読の効果をしっかり理解し、正しく取り組むことで子供だけでなく大人も脳が活性化され、自身の能力を上げることができます。これをきっかけにぜひ速読に挑戦してみてはいかがでしょう。