「勉強をはじめるとすぐに気が散って、集中力がなかなか続かない…」
そんな悩みを抱えている人は、かなり多いみたいですね。
本を読んでいるとすぐに眠くなって気がついたら同じ行を何回も何回も読み返していたり、普段は気にならない空調の音や時計の音がやたらと気になったり、体のあちこちがカユくなってムズムズしてきたり…。
ダメ、ここは頑張って勉強しなくちゃ!って思えば思うほど、
集中のジャマをする食いしん坊の悪魔
が湧いてきて、集中力という栄養たっぷりのエサをどんどん食い散らかしていく。
そういうイメージを持っている人は、きっとたくさんいることでしょう。
「もっと集中力がアップすれば、同じ時間で効率よく勉強できるようになるはず!」
そう信じて座禅をしてみたり、思い切って滝行をしてみたり、、、
まぁ、そこまでしなくっても何かしら集中力を鍛えるための努力をしてみたという経験は、もしかしたらあなたにもあるかもしれません。
勉強して新しいことを覚えるためには、教習所で車を運転するときと同じぐらいの高い集中力が必要だと言われています。
では、そのような高い集中力を勉強中にキープするにはどうしたらいいのか?
「スグ気ガ散ル症候群」を克服するためには、
内部環境(メンタル面)と外部環境(身の周りの状況)の両方を改善する
ことが大切です。
集中のジャマをする悪魔を退治し、勉強している内容がスルスルッと頭の中に入っていく実感が湧いてくる。
そんな集中力アップの方法を、今回はいくつか紹介しましょう。
「集中力がない」なんてことはありえない。
まず知っておいてほしいのは、
「集中力がない」という人は、この世に1人もいない
という事実です。
「自分には集中力がない」と思い込んでいる人は多いですが、それはただ単に「集中できた経験」が足りておらず、実感が伴っていないだけ。
一度でもカンペキに集中できたという経験ができれば、そのような苦手意識はまたたく間になくなっていくはずです。
では、なぜ集中力は誰もがみんな必ず持っていると言えるのか?
それは、
集中力とは「一種の生存本能」である
と考えられるからです。
今でこそいきなり道端で敵に襲われるなんてことはほとんどありませんが、はるか大昔、私たちの祖先がまだ何の文明も持たなかったその時代は、1つ油断するとあっと言う間に敵に襲われて命を落としかねない、そんな状況がずーっと続いていたわけです。
そんな過酷な環境の中で、私たちの祖先が真っ先に身につけたものがあります。
それこそが、まさに集中力。
どんな状況になっても素早く対応できるようにアンテナの感度を上げ、敵が来たらすぐに逃げれるように心と体の準備を整えておく。
それは、いわば「生き残りをかけた戦略」だったわけです。
そう、集中力とは身を守って生存するために太古の昔から体に備わっている「生物としての防衛本能」だと言えるわけですね。
お腹が空いたらご飯を食べたくなるし、眠くてどうしようもないときは寝てしまう。
これって、人間が心地よく生活する上では欠かせない「本能」ですよね?
生物が暮らすにあたって本当に大切な振る舞いのことを「本能」と呼ぶのであれば、集中力はその中でもかなり優先順位の高い「生存本能」だと言えるのです(だって、集中力を持たない個体は真っ先に敵にやっつけられちゃうワケですから)。
つまり、
あなたが祖先から命をつないできたという事実=集中力を持っていることの証明
だと考えられる。
あなたが今生きているということは、高い集中力を発揮できる才能を100%祖先から引き継いでいるということを意味します。
「集中力がない」は、ただの思い込みであり幻想です。
勉強に集中する方法を知り、少しずつ集中できたという経験を積んでいけば、間違いなくあなたの中に眠っている「才能」が引き出されてきます。
集中力アップに必要なのは「環境」である。
今、あえて「才能」という言葉を使いました。
ただ、才能というのはそう簡単に意識して引き出せるものではありません。
あなたの中に眠っている集中の才能を呼び起こすためには、集中するためにもっとも適した「環境」を作っていく必要があります。
この環境は、主に2つの側面が考えられます。
それは、
メンタル面と周囲の環境
の2つです。
勉強に集中する方法 その1 メンタル面の環境を整える
「明日、好きな人に告白しよう!」
って決意した瞬間、意識はもう愛するアノ人の方向へとまっしぐら。
告白のタイミングやセリフ、そして告白が成功するのかどうかが気になって気になって、きっと勉強どころではなくなってしまうでしょう。
最新の脳科学の研究によると、
脳は「マルチタスク(同時に2つ以上の物事を処理すること)」を嫌う
ということが分かっています。
テレビを見ながらパソコンでメールを打ったり、英会話のテープを聞きながら社会科のテキストを読んだりすると、それだけで脳は集中することを放棄してしまうのです。
いろんなことを同時に処理できる人はビジネスの現場で尊敬されたりもしますが、それは同時並行で処理しているように「見える」だけのこと。
しっかりと取り組むべきことの優先順位を考え、1つ1つをスピーディーにこなしているというのが実際のところなのです。
とにかく、脳のコンディションを整えて集中力を上げるということを考えるのであれば、マルチタスクはできるだけ控えるべきでしょう。
さて。
この「マルチタスクが集中力を下げる」ということについては、実はメンタルについても同様の説明ができます。
つまり、勉強以外のことで深く思い悩んでいることなどがあると、自然とそちらに意識が取られてしまい、目の前の勉強に集中することが難しくなってしまうということです。
メンタルを整えて集中のためのよいコンディションを作り出す具体的なステップは、以下の通り。
STEP1:「気になっていること」を洗い出してみる。
自分の気持ちの中を冷静に見つめてみましょう。
今、あなたにとって重要なこと、気になっていることは何ですか?
そして、それらの優先順位はどのような感じでしょう?
頭の中で想像するだけもOKですが、できるならばそれらすべてを紙に書き出して考えてみましょう。
勉強以外に気になっていることがあるなら、気持ちを隠さずそれらを素直に書き出してみることが大切です。
STEP2:優先順位の高い方から1つ1つ処理していく。
優先順位がなんとなく分かったら、落ち着いて1つずつ「気になっていること」をクリアしていきましょう。
「明日、好きな人に告白するゾ!」
というのがどうしても気になるのであれば、今日のところはひとまず勉強を休む…というのも1つの手かもしれません。
「そんなヒマな時間があるなら、ちょっとでも勉強した方がいい!」
って思うかもしれませんが、焦りは禁物。
集中力を欠いた運転は、大きな交通事故のもとです。
その後の勉強を効率よく進めるためにも、まずは心のつっかかりを1つずつ丁寧にはずしていく必要があります。
先ほども説明した通り、脳はマルチタスクを嫌います。
そして、現実的に1人の人間にできることは限られている。
自分が気になっていることを一度すべて洗い出し、プライオリティ(優先順位)をつけて、1つ1つ順番に対処をしていくというのは非常に優れた戦略だと言えるでしょう。
遠回りのように見えるかもしれませんが、これがマルチタスクを避けて集中力をもっとも高いパフォーマンスで発揮するための「心の整え方」です。
勉強に集中する方法 その2 周囲の環境を整える
心にわだかまりがなく、メンタル的に勉強のジャマをするものは何もないという状態になれば、次に「勉強に集中せざるをえない環境」を作っていきましょう。
周囲の環境とは、
場所と時間と体そのもの
の3つをここでは指しています。
1つずつ、具体的に見ていきましょう。
周囲環境の整え方 その1 場所を変えて集中力アップ!
いつも決まった机に座って勉強しなくちゃいけないって思ってませんか?
テレビやマンガ、インターネットなど、手を伸ばせばすぐに別の世界へ飛び込むことができる「誘惑」にあふれた環境だと、どうしても集中力は妨げられてしまいます。
誘惑がいっぱいで勉強に集中できないのなら、思い切って自分の部屋を飛び出して「勉強の旅」に出かけてしまえばいいのです。
締め切りに追われて原稿の執筆に集中せざるをえない作家の中は、いつもの書斎ではなくホテルに連泊して仕事に取り組む人もいると言います(いわゆる「カンヅメ」というやつです)。
周りの雰囲気が変われば、それだけで気持ちも新鮮になるというもの。
自宅から図書館へ、喫茶店へ、自習室へ。
そういう、
自分の部屋以外の「お気に入り勉強スペース」
を近所に見つけておくと、そこに通うだけで集中力をうまく保ちながら質のいい勉強できるようになります。
勉強場所を変えるのには、もう1つオイシイ効果があります。
それは、環境音です。
集中力を高めるには、意外かもしれませんが「適度な騒音」が効果的だと言われています。
あまりにシーンとした空間だと逆にちょっとした物音とかに気が取られてしまいますし、ライブハウスで勉強するっていうのはやはり無理があるというもの。
勉強に集中できる「適度な騒音」として有名なのは、
自然環境音とホワイトノイズ
の2つです。
喫茶店で食器がぶつかり合う音や、人が歩く音。
小鳥のさえずる声や風が吹く音などの自然環境音は、(適度な音量であれば)集中力を妨げることなく、むしろ目の前の作業に没頭させる効果があると言われています。
ホワイトノイズ(白色雑音)については、Wikipediaに詳しい説明が載っていますので、そちらを参照してください。
例えば、「テスト勉強中は携帯電話の電源を落として、ヘッドホンをつけてホワイトノイズを聞くようにする」みたいな工夫をすれば、意外な集中力を発揮できるかもしれません。
周囲環境の整え方 その2 時間を細切れにして集中力アップ!
400メートル走を最初から最後まで集中して全力で走るために、
全力ダッシュと力を抜いて走るところを「細切れ」にしてトレーニングする
という方法が、かつて旧ソ連で考案されたそうです。
人間が集中力を保てる時間というのは意外と短く、特に頭をフル回転させて勉強するときには、30分〜40分ぐらいしか集中力は保てないと言われています。
ここで重要になるのは、旧ソ連式の発想。
つまり、
時間を細切れにして勉強し、ちょっとずつ集中力を伸ばしていく
という方法でやってみることです。
ポイントは、あらかじめ勉強する時間を決めておき、時間が来たら「たとえ疲れていなくても」休憩を挟むということ。
あくまで機械的に、たとえどんなに中途半端であっても時間がきたら一旦勉強をストップさせる。
休みたくなる前に休んでしまうというのがミソです。
中途半端でやめるなんて気持ち悪い!って思うかもしれませんが、その気持ちこそが勉強の続きに取りかかるための「意欲」になっていきます。
時間がきたら勉強をやめ、中途半端さをリカバリーするために勉強を再開する。
そういうことを繰り返しているうちに、気がついたら意外と長く勉強できているものです。
最初は、勉強時間:30分 → 休憩時間:5分ぐらいのサイクルで勉強に取り組んでみるのがちょうどいいでしょう。
慣れてきたら勉強時間を少しずつ伸ばしていき、1時間ぐらい没頭できるようになればかなり集中力がついてきたと判断してOKです。
周囲環境の整え方 その3 ウォーキングや軽いランニングで集中力アップ!
脳は、体の一部である。
それは誰も疑っていないはずなのに、「体をいいコンディションに保てば、脳もいい状態でキープできる」という意見を、意外と誰も言ったりしません。
ハーバード大学の医学博士、ジョン・J・レイティ氏によると、
運動が刺激となって脳は学習の準備をし、意欲を持ち、能力を高める
のだそうです。
脳を鍛えるには運動しかない!
参照:amazon『脳を鍛えるには運動しかない!』
脳科学について詳しいことは分からなくても、適度に運動したあとは頭がサッパリした感じになり、ストレスも感じにくくなっているということについて、異論がある人はおそらくいないはず。
体と心以上に、体と脳とはダイレクトにつながっているわけです。
レイティ博士は、「脳を作る運動」として有酸素タイプの運動、特にウォーキングや軽いランニングをすることを強く勧めています。
軽い有酸素運動をすることでセロトニンやドーパミン、ノルアドレナリンなどの「集中力やヤル気を増進させる物質」がたくさん分泌されるというのがその理由です。
勉強に疲れたら、気分転換に散歩に出かけてみる。
すると、その散歩が脳を新たに刺激してくれるので、再び勉強に取り組むヤル気が湧いてくるといった好循環を生み出せるかもしれません。
勉強の集中力をアップさせるために滝行する…っていうのは、ちょっと現実的なアイデアではないですね。
しかし、ほんの少し高価なランニングシューズに投資して運動の習慣をつけるっていうのは、実に素晴らしい集中力アップのアイデアと言えるのではないでしょうか?
今回のまとめ
いかに高い集中力を発揮するかという問題は、勉強に限らずあらゆることに関係してくる「人生の一大テーマ」と言って過言ではありません。
今回の記事でお伝えしたかったのは、
集中力は、内部(メンタル)と外部(身の回りの状況)の両方に支えられている
ということです。
オリンピックに出場するような選手でも「プレッシャーに負けて結果が出せなかった」と振り返ることはよくあることだし、どれだけ達観したお坊さんでも綱渡りをしながらお経を唱えるのは無理というもの。
メンタルと身の回りの環境を整えるのは集中力アップに欠かせないことですが、ただ、一朝一夕で身につけられるようなものではないというのも事実でしょう。
しかし、はじめの方に書いた通り、あなたは確実に「集中できる才能」を持っています。
少しの工夫と努力でボタンの掛け違いを直せば、勉強に集中できる体質に変えていくのはそれほど難しいことではありません。
集中とは、
時間をうまく圧縮し、人生をより豊かにするための手段
だと言えるのではないか。
今回の記事を書いていて、そう感じました。
この話が、集中力を食い散らかす悪魔退治の役に立ち、より楽しい勉強と充実した人生を実現する1つのきっかけになれば幸いです。