試験やテストを控えている人にとって「どうすれば勉強した内容を記憶できるのか?」「どんな方法で暗記すればすんなり覚えられるのか?」という疑問は、是が非でも解決して苦べきテーマです。この仕組みさえ知れば、短時間で効率よく必要な知識や情報を記憶できるからです。
ご存知の通り、あらゆる記憶は全て脳に蓄積されます。しかし、知らない知識や情報がいかにして脳に“記憶”として残るかのメカニズムを知っている人はほどんどいません。
実はこのメカニズムを知ることによって、より効率よく脳に記憶を溜め込むことができます。そこでここでは、脳に記憶を刷り込ませるまでの工程をお話していきます。
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人間は生きてから死ぬまでにおよそ15兆もの事柄を記憶するといわれています。特に右脳の記憶容量はとても膨大で、一説には『一度脳にインプットされたものを忘れることは決してない』とまで言われているほどです。
これまでの研究で、右脳の記憶は「無意識的な要素」が強いといわれています。つまり、本人が全く意識していなくても見たもの・聞いたもの・触れたものなどをすべて脳に記憶されてしまっているのです。
しかし、そんな認識が全くないのは単純に記憶した情報を“忘れた”のではなく“思い出せない”からなんです。
例えば、とても大切にしているペンを大事に部屋のどこかにしまったとしましょう。しかしそのしまった場所がどこか分からなかったらペンを使うことはできませんよね?
実は脳の記憶というのもこれと同じ様な現象が起きているのです。しかも無意識のうちに記憶が運び込まれたわけですから、当然脳のどこにその記憶を置いたのか分かるわけがありません。
だから「覚えていない」「忘れた」と言ったことが起こるのです。脳の中で行方不明になっている記憶を思い出すことはできません。
つまり、脳のどこに記憶をしまったのかをちゃんとタグ付けできていれば、その知識はいつでもすぐに思い出すことができます。ではどのように覚えた記憶にタグをつけてすぐに思い出せるようにすればいいのか?
そのためには知識が記憶になっていくまでの5つのステップを意識することです。その5つのステップとは
ステップ1:印象を受ける
ステップ2:記録される
ステップ3:蓄積される
ステップ4:脳内で再現化される
ステップ5:過去の経験を意識する
です。では1つずつもう少し掘り下げてお話していきましょう。
ステップ1.印象を受ける
まず前提として、人が記憶できるものというのは必ず“印象”というものが発生します。勉強でも新しい漢字を見たり書いたりしますし、英語耳で聞いたりするのも印象です。
こうした印象は普段生活している中で当たり前に発生しています。まず五感で感じれるものは全て印象として受けていることになるため、24時間何からの印象を受けっぱなしという状態といっていもいいでしょう。
にもかかわらず、なぜ全く記憶に残らないのか?その原因は“印象の度合い”が弱いからです。
例えば、注射くらい明確に腕に刺されるものであれば「痛い!」と感じると思います。ところが蚊に刺された後に「かゆい」とは感じても、蚊に刺されている瞬間に「痛い」と感じる人は少ないはず。
脳もこれと同じで、印象が薄いものは“記憶した”という印象自体が少ないため、記憶した知識がどこにあるのか理解していません。逆に強烈な印象の記憶というのはそれだけ脳を刺激したため、いつまででも覚えていますし、ちょっとしたきっかけですぐに思い出すことができるのです。
つまり、記憶に残したいのであればいかに“印象”を強くできるかがポイントです。
偶然であれ意図的であれとにかく印象さえ強ければその強さに比例して記憶に残りやすくなります。勉強や暗記でも、覚えたい内容をいかにインパクトをつけて覚えるかによって頭に残る時間や思い出すのに必要な時間が変わってきます。
試験やテストなどで覚えたいものは、五感をフルに使って強いインパクトを意図的に受けるよう工夫してみてください。それだけでも勉強した内容が忘れにくくなります。
ステップ2.脳に記録させる
外部から受けた印象はあらゆる感覚を経由して脳に記憶されます。基本的に五感で受けたものはすべて脳に記憶されると思っていいでしょう。
ただし、ステップ1.でもお話したように受けた感覚の印象が強ければ強いほど脳にきちんと記憶されます。
例えばスタンプでも、強く押したほうがより鮮明に紙にスタンプの模様を写すことができますし、逆に押しが弱いとぼやけたり薄くなってどんな模様かよく分かりませんよね?
この例で言えば、スタンプとは受けた印象のこと。つまり、どれだけ受けた印象が強いかによって記憶の濃さも変わってくるのです。
この記憶が薄いと思い出す時に記憶の内容を読み取ることができず、曖昧な記憶になってしまいます。「この部分は覚えているけど他は覚えていない・・・」というのは、記憶したものにムラがあり、覚えている部分とそうでない部分とができてしまったからなのです。
よりハッキリ記憶に刻むためには強い印象を受けること。そうすることで、記憶はより鮮明に刻まれることになります。
ただし、印象が薄くても記憶に残すことはできます。スタンプでも最初は薄くても同じ濃さで何度も押せば徐々に濃くなっていくように、薄い印象でも何度も同じ知識を入れることで徐々に強い記憶となっていくのです。
つまり、脳に記憶させるためには
・記憶させたい知識の印象を強くする
・何度も同じ印象を受けて記憶を上書きしていく
この2つが基本的な記憶の仕方です。ただ、後者については同じ感覚で印象を受けると感覚がその印象に慣れてしまうため、さまざまな印象の受け方を心がける必要があるので注意が必要です。
ステップ3.脳に蓄積される
脳にインプットされた記憶は脳内で蓄積されます。この時記憶は重要な記憶や走でない記憶を仕分けして、それぞれの記憶があるべきところに勝手に振り分けます。
例えば、より印象が強い記憶だった場合、それだけ脳にもしっかりインプットされているため、常に思い出しやすいところに置かれます。しかしあまり印象が薄い記憶は“必要な情報ではない”と判断され、脳の奥のほうに追いやられてしまうのです。
同じ記憶でもすぐに思い出せるものとなかなか思い出せない、もしくは忘れてしまった記憶の違いはまさにここ。印象が強ければ強いほど、より簡単に思い出しやすいところに記憶が蓄積されるのです。
こうした記憶は単に知識や情報だけでなく“経験”も同じです。小学校で受けていた授業を1日たりとも覚えている人はいませんが、運動会や遠足や修学旅行の思い出は記憶している人が多いと思います。
これも日々の授業に比べて運動会などのイベントごとのほうがより印象が強かったため、思い出しやすいところに蓄積されたのです。そのため、ちょっとしたキーワードが出ると「そういえば運動会でさ・・・」とすぐに思い出すことができるのです。
また、一度置かれた記憶というのは時間やインプットする知識によってその都度場所が変わっていきます。常に思い出すし位置に記憶を置いておきたいのであれば、適度に覚えなおしてメンテナンスすることをおすすめします。
ステップ4.脳内で再現化する
記憶はただ脳に蓄積するだけでは意味がありません。それを自分が欲しいときに引き出せるようにってはじめて“記憶”として機能します。
人は生きていくうえでたくさんのことを記憶しますが、中には似たような記憶もあります。分かりやすいのが漢字で『千』と『干』だったり、『志』と『忘』など一見同じように見えるけど若干違うものがたくさんあります。
こうした似たような記憶というのはいざ思い出そうとした時に同時に出てくる可能性が極めて高いです。漢字を書こうとする時に「あれ?どっちだっけ?」となる時があると思いますが、こうした現象は脳内で再現化が上手くできていない証拠です。
こうした記憶の間違いを防ぐためにも、記憶したものを脳内で再現化させておくことが重要になってきます。分かりやすくいうと“記憶の整理”です。
例えば、脳内で定期的に覚えていることをひっぱり出してみるのもいいですし、勉強出れば復習として覚えているかどうかをチェックしてみたり。こうすることで、間違って覚えた記憶を修正していきます。
さらにこうして再現化された記憶というのは、する前に比べてより印象が強くなる傾向があります。少し奥にしまった記憶を再びひっぱり出すわけですから、更新された記憶としてより印象が強くなるからです。
一度覚えたからといって安心していると記憶は時間とともに劣化する恐れがあります。特に勉強などで必要な記憶は定期的に再現化して忘れないようにしましょう。
ステップ5.過去の経験を意識する
記憶というのは、時間とともに増え続けていきます。そのため、古い記憶はどんどん脳の奥のほうへ追いやられていき、新しい記憶が思い出しやすいところを占拠していきます。
書類でもどんどん重ねていけば、下の方が古いものになり新しい書類は上のほうに積まれますよね?そして、下にある書類よりも上にある書類の方が取りやすいですから、下にある書類はそのまま眠ったままになります。
また、新しい記憶は思い出しやすいというメリットがある反面、印象が弱いとすぐに引き出せないほど奥に入ってしまうというデメリットもあります。そこで、過去の記憶や経験と新しい記憶を上手に紐づけることが大切。
記憶というのは知識よりも経験の方が残りやすい特徴があります。それは目や耳だけしか使わなくていい知識よりも五感をフルに使った経験の方が印象が強いからです。
こうした過去に経験したことというのは、比較的思い出しやすいところに記憶がいつまでも定着します。こうした過去に新しい過去を結びつけることによって、その過去の経験を思い出す際に一緒になって新しい記憶が思い出されるのです。
「勉強は人に教えたほうが知識になる」といわれているのも“教える”という経験に教えた知識や情報が勝手に紐付けされるため。このように、経験を軸に覚えて言ったほうがより確実な記憶を頭の中に残すことができるのです。
まとめ
記憶というのは、ただ闇雲の覚えようと思ってもなかなか脳に定着しません。ある程度手順やポイントにそって覚えていくことで短時間で忘れにくい記憶にすることができるのです。
そのためには、脳がどういった記憶が覚えやすく、どういった記憶が覚えにくいかを知っておくことが大切。そして脳にとって覚えやすい暗記法や勉強をすることによって、より記憶に残りやすくなりますので、ぜひここで紹介した5つのステップは理解してください。