空気が読めない発言をしたり、突然意味の分からない行動を取る・・・といった特徴から「人とのコミュニケーションがうまくできない病気」として有名なのが自閉症です。現在日本には自覚していない人も含めて100万人以上の人が自閉病といわれており、決して特別な症状ではありません。
コミュニケーションが上手く取れないため、どうしても距離を置かれがちな自閉病の方々ですが、実は彼らの中にはすばらしい才能を持った人達もいます。特に記憶力においては普通の人に比べてはるかに高いものを持っている人もいたりします。
なぜ自閉症の人達の中には、とてつもない記憶力を持った人がいるのか?ここでは自閉症と記憶力の関係性について詳しくお話してきます。
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自閉症とは
自閉症と記憶力の関係性の話をする前に、まず自閉症がどういった病気なのかを正しく理解する必要があります。奇妙な行動だったりコミュニケーションが取れないことから“心の病気”と思われがちですが、実際は発達障害の1つです。
自閉症とは生まれつき脳の機能が上手に働かず、発達・成熟に障害をもっていることにより、心を通わせることが不可能な3歳までに発症する神経発達の病気です。現在自閉症は典型的な子供の数を数えても1000人に2~6人、そうでない軽症のタイプの子供まで合わせると100人に1人くらいはいると考えられています。
人によって症状は千差万別ですが、自閉症の人の症状には大きく分けて3つの能力障害があります。その3つとは『対人交渉の質的な問題』『コミュニケーションの質的問題』『イマジネーション障害』です。
対人交渉の質的な問題
自閉症の人は自分と相手との関係を正しく理解できない傾向があります。周囲から見たら人嫌いとか自分の殻にこもるなど、人付き合いの量が乏しいと思われがちですがそういったことではありません。
自分と相手との関係が正しく理解できないということは、ものすごい人懐こいかもしくは極度の人見知りか両極端に分かれます。
同じ自閉症の赤ちゃんでも、人見知りがなくて誰にでも平気で抱かれたりお母さんの後追いが乏しかったりする子もいれば、人見知りが極端に激しく、1~2歳を過ぎてもお父さんにすら自分の世話をさせないという子もいます。
また2~3歳になると友達に意識した行動を始めるのですが、自閉症の子は友達への関心が全くないかもしくは一方的な関心が高くなるかのどちらかになります。
コミュニケーションの質的問題
自閉症の子は幼児の時にほとんどの子に話し言葉の遅れがみられますが、重要なのはそれよりも言葉の獲得の偏りや奇妙さです。要は興味のある言葉はすぐに話すものの、走でない言葉は全く話さないのです。
通常子供は「パパ・ママ・ネンネ」など日常で必要な言葉から覚えていき、覚えた言葉は早速使う傾向があります。ところが自閉症の子は肝心の「パパ・ママ」といった言葉を言わずに覚えた言葉ばかりを独り言で言うばかり・・・というのが多く見られます。
また帰ってきたときに「ただいま」ではなく「お帰り」といったり、「バイバイ」と手を振る時に手のひらではなく手の甲を相手見せて振ったりすることもあります。これらは全て、自分と相手との関係性が正しく理解できず、自分と相手の立場を考えて学習することが苦手なためと考えられています。
イマジネーション障害
通常の子はAかもしれないBかもしれない・・・といった不確定な要素を楽しんだりすることで、少しずつ臨機応変に対応する力を養っていきます。しかし自閉症の子はこうした力が極端に不足しているため、不測の事態に陥るとパニックになり、本来できることができなくなってしまいます。
そのため、常に同じ状態であることに強く固執します。
例えば道順でも常に同じルートを通るようにしたり、物の置く場所も自分で勝手に決めてみたり。それ以外にも常に何か手に持っていないと嫌だ・・・なんてこだわりもあります。
遊ぶ時も穴に入れたりボタンを押すといった単純なおもちゃに熱中したり、なんでも一列に並べることに没頭する傾向があります。また、電車をはじめマーク・文字・記号・特定のキャラクターなどに強い偏った関心を示すこともあります。
自閉症の人の記憶力について
意外と誤解されがちな自閉症ですが、実は中にはとんでもない能力を開花させた人も多くいます。例えば教えてもいないのに2歳でアルファベットを全部言えたり、3歳で国の国旗を全て暗記できるのも自閉症の子の特徴ともいえます。
ではなぜ自閉症の子は普通の子よりはるかに記憶力が高いのか?
普通の人はモノを見て、それが何かを判断し、それにふさわしいアクションを起こします。これは脳が成長するにつれて、どういうシーンでどういう行動がふさわしいかを脳が判断し、体に信号を送っているからです。
自閉症の子はこうした判断が非常に苦手です。先ほど紹介した『対人交渉の質的な問題
』でも挙げたように、自分と相手の立ち位置が理解できないため、行動に表すことができません。
でも実はこれが記憶力が高くなる原因でもあるのです。普通の人が普通にできるこれらの行動をする場合、左脳が働いています。具体的には情報にフィルターをかけて、論理の力でまとめあげてから行動するのであり、このフィルターを左脳が行います。
つまり、こうした臨機応変な対応ができない自閉症の子とというのは、左脳の働きに障害があるということ。かけるべきフィルターがかからず論理的にまとめることができないため、コミュニケーションを取ることができなかったりするのです。
ただし、左脳の働きに障害があるということは左脳で“記憶する”ことも苦手だということ。
「効率よく勉強するために知っておくべき記憶のメカニズム」でもお話していますが、記憶には短期記憶と長期記憶があり、短期記憶は左脳で、長期記憶は右脳で記憶します。しかし脳の障害で左脳の働きが弱いということは、必然的に右脳で物事を記憶するようになってしまうのです。
そのため、目で見たものを何のフィルターも通さずすべて記憶として焼き付けることができるため、普通の人で覚えられないようなことも瞬時に記憶することができるのです。例えば電話帳1ページ分の情報を一瞬見ただけで覚えれたり、何年も前に見た景色を細かい部分まで正確に覚えていられるのも、本来左脳によって覚えるべきものも全て右脳で覚えているからなのです。
自閉症の子がもつ天才的な才能
他人とのコミュニケーションが上手く取れないことから、自閉症は“心に病気を持った人”という認識を持っている人が非常に多いのが現状です。しかし、自閉症の人でもひとたび才能に目覚めれば天才的な能力を持つことも珍しくありません。
アインシュタインも3歳まで言葉を覚えなかったことから自閉症だったのでは?という噂がありますし、映画「はだかの大将」で有名な画家の山下清さんも、あれほどすばらしい作品を描けたのも自閉症による驚異的な記憶力によるものだといわれています。
また自閉症の子供の中には、その才能を早くから開花させた子もいます。
例えば、11歳の少年が大学のホワイトボードに描いた世界地図は、細かい国境から国の形までをほぼ完璧な状態で描かれているということで、ネットで話題になりました。
海外掲示板Redditで、超絶話題となっていたのは、Redditユーザーが「11歳の自閉症の少年が娘の大学に来て、記念にこれを描いていった」というスレに上がっていた画像である。
これは母親である大学教授が自閉症である自分の息子を講義に招き、ホワイトボードに記憶だけを頼りに世界地図を描いてもらうというものだったのだけど、クラス中が沸きに沸いた。授業に参加している学生がその写真を撮り、その画像を父親がRedditに投稿したのだ。
引用:カラパイア
また、5歳の自閉症の女の子が描く絵も、独特な色使いやデザインが美しいと世界中で話題になりました。
このように、自閉症によって記憶力だけでなく芸術においても才能を開花させる人は多いです。
もちろん、自閉症だからといってこうした才能が開花するわけではありません。自閉症の子は普通の子に比べて成長のバランスが偏っているため、このバランスを普通の子と同じようにすると、せっかくの才能をつぶしてしまうことになります。
彼らがこうした才能に目覚めることができたのは、親の育て方が非常に大きいです。できないことを叱るのではなく、できたことを褒めてあげることによって、自閉症によって得た才能をより花開かせることになります。
自閉症は症状的に自分では気づくことができないため、周囲の人の理解とサポートが必要不可欠です。もしお子さんや身近に自閉症の方がいらっしゃったら、“普通じゃない人”として距離を置くのではなく、その人が持っている才能を見極め、そこを伸ばしてあげるようサポートしてあげてください。
まとめ
人が記憶するためには右脳と左脳の働きが必要不可欠です。自閉症の人というのは、その脳に障害を抱えていることによって、その部分を補うような形で記憶力や芸術性といった能力が開花されています。
もちろん、記憶力は生まれ持った才能として人それぞれに限界があるわけではありませんし、たくさん勉強したからといって簡単に向上するものでもありません。ただ、自閉症の人が持つ驚異的な記憶力の仕組みを知ることで、記憶力を上げるには何が必要かを知るきっかけにもなります。
普通の人と自閉症の人というのは決して大きな違いはありません。脳を以下に効率よく使えるようになるか・・・これが学力を上げるために考えなければいけないことだということを認識して、日頃の勉強の取り組み方を考えてもらえればと思います。